2015年1月6日火曜日

69年前の詔書(昭和二十一年一月一日詔書)

詔  書




茲ニ新年ヲ迎フ。顧ミレバ明治天皇明治ノ初国是トシテ五箇条ノ御誓文ヲ下シ給ヘリ。

曰ク、
一、広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スヘシ
一、上下心ヲ一ニシテ盛ニ経綸ヲ行フヘシ
一、官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ケ人心ヲシテ倦マサラシメンコトヲ要ス
一、旧来ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クヘシ
一、智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スヘシ
叡旨公明正大、又何ヲカ加ヘン。朕ハ茲ニ誓ヲ新ニシテ国運ヲ開カント欲ス。須ラク此ノ御趣旨ニ則リ、旧来ノ陋習ヲ去リ、民意ヲ暢達シ、官民挙ゲテ平和主義ニ徹シ、教養豊カニ文化ヲ築キ、以テ民主ノ向上ヲ図リ、新日本ヲ建設スベシ。

大小都市ノ蒙リタル戦禍、罹災者ノ艱苦、産業ノ停頓、食糧ノ不足、失業者増加ノ趨勢等ハ真ニ心ヲ痛マシムルモノアリ。然リト雖モ、我国民ガ現在ノ試練ニ直面シ、且徹頭徹尾文明ヲ平和ニ求ムルノ決意固ク克ク家ヲ愛スル心ト国ヲ愛スル心トハ我国ニ於テ特ニ熱烈ナルヲ見ル。今ヤ実ニ此ノ心ヲ拡充シ、人類愛ノ完成ニ向ヒ、献身的努力ヲ効スベキノ秋ナリ。

惟フニ長キニ亘レル戦争ノ敗北ニ終リタル結果、我国民ハ動モスレバ焦躁ニ流レ、失意ノ淵ニ沈淪セントスルノ傾キアリ。詭激ノ風漸ク長ジテ道義ノ念頗ル衰ヘ、為ニ思想混乱ノ兆アルハ洵ニ深憂ニ堪ヘズ。

然レドモ朕ハ爾等国民ト共ニ在リ、常ニ利害ヲ同ジウシ休戚ヲ分タント欲ス。朕ト爾等国民トノ間ノ紐帯ハ終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依リテ結バレ、単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非ズ。天皇ヲ以テ現御神トシ、且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ、延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ。

朕ノ政府ハ国民ノ試練ト苦難トヲ緩和センガ為、アラユル施策ト経営トニ万全ノ方途ヲ講ズベシ。同時ニ朕ハ我国民ガ時艱ニ蹶起シ、当面ノ困苦克服ノ為ニ、又産業及文運振興ノ為ニ勇往センコトヲ希念ス。我国民ガ其ノ公民生活ニ於テ団結シ、相倚リ相扶ケ、寛容相許スノ気風ヲ作興スルニ於テハ、能ク我至高ノ伝統ニ恥ヂザル真価ヲ発揮スルニ至ラン。斯ノ如キハ実ニ我国民ガ人類ノ福祉ト向上トノ為、絶大ナル貢献ヲ為ス所以ナルヲ疑ハザルナリ。

一年ノ計ハ年頭ニ在リ、朕ハ朕ノ信頼スル国民ガ朕ト其ノ心ヲ一ニシテ、自ラ奮ヒ自ラ励マシ、以テ此ノ大業ヲ成就センコトヲ庶幾フ。

  御 名 御 璽

   昭和二十一年一月一日




昭和20年8月の敗戦後、初めての新年に当たり、先帝陛下(昭和天皇)が国民に向けて発せられた詔書。学校では「人間宣言」と習ひましたが、この詔書のどこを読んでも「朕は実は人間だつたのだ」とか「今後は人間として生きて行きます」等とは書かれてゐません。当然です。

内容をじつくり読んでみれば、これは正に敗戦後の混乱と困窮に苦しむ国民に向けて、「心配するな。こんな状況でも汝ら国民は立派にやつてをる。他に新しい理念を探し求めて迷ふ必要はない。明治天皇の五箇条の御誓文に立ち戻り再出発すれば好いのだよ」と仰つて励まして下さつてゐるものです。

それは即ち、國體は滅んでゐない、といふ御趣旨の「國體護持宣言」だつたのではないでせうか。

同じ正月の歌会始で御詠み遊ばされた御製は
ふりつもる み雪にたへて いろかへぬ
          松ぞをゝしき 人もかくあれ

どんなに辛からうが日本人らしさを忘れるな、と叱咤されてゐる心地がします。

そしてこの詔書と御製が発揮した絶大な影響力は、その後現在までの我が国の発展と繁栄とを見れば一目瞭然だと思ひます。
わが国の たちなほり来し 年々に
          あけぼのすぎの 木はのびにけり

しかしまた、残念ながらまだ完成途上にあることも事実です。
やすらけき 世を祈りしも いまだならず
          くやしくもあるか きざしみゆれど


 以下、詔書の大意


五箇条の御誓文〔略〕

明治天皇の御趣旨は公明正大で、何一つ加へる必要はない。朕はこゝにもう一度この御趣旨に立ち返つて国運を開きたい。それには須らく明治天皇の御趣旨に則て、民主の向上を図り、新しい日本を建設せねばならない。

現在我が国は敗戦で悲惨な状態にあるが、それでも我が国民は平和への決意固く、家や国を愛する心は熱烈である。この心を今こそ更に拡充し、人類愛の完成に向かつて貢献せよ。

国民が敗戦の失意に沈み、道義が廃れ、思想混乱の兆しがある〔釈:共産主義等の馬鹿な思想に惑はされつゝある〕のを非常に憂慮してゐる。しかしそれでも朕は国民と苦楽を共にする。朕と国民との紐帯はいつでも相互の信頼と敬愛によつてゐて、単なる神話や伝説によるのではない。天皇は神で、日本国民は優秀な民族だから世界を支配する運命を持つなどといふ架空の観念に基づくのでもない〔釈:コミンテルンのスパイ以外に、そんな事を言つた者も考へた者もゐない〕

朕の政府は国民生活を少しでも好くする為に、あらゆる策を講ぜねばならない。それと同時に朕は、国民がこの苦難を克服する為に、産業や文化を振興する為に勇敢に立ち向かふことを希望する〔釈:政府も頑張るが、国民も頑張つて欲しい〕。国民が互ひに団結し、助け合ひ、寛容な心を育めば、我が国の誇るべき伝統に恥ぢない真価を発揮できるだらう。以上のことが実現できるなら、我が国民は人類の福祉と向上に絶大な貢献を為せるに違ひない。

一年の計は年頭に在り。朕は信頼する国民が朕と心を一つにして、自ら奮ひ励まして、この大業〔=人類への貢献〕を成就するやう願ふ。

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