2017年10月5日木曜日

開国の御沙汰書

(明治元年一月十五日)


外国之儀ハ、先帝多年之宸憂ニ被為在アラセラレ候処サフラフトコロ、幕府失錯ニヨリ、因循今日ニイタリ候。折柄ヲリカラ世態オホイニ一変シ、大勢誠ニ不被為得止ヤムヲエサセラレズ此度コノタビ朝議之上、断然和親条約被為結ムスバセラレ候。就テハ、上下一致疑惑ヲ不生シヤウゼズ、大ニ兵備ヲ充実シ、国威ヲ海外万国ニ光輝セシメ、祖宗先帝之神霊ニ対答タイタフ可被遊アソバサルベキ叡慮サフラフ間、天下列藩士民ニ至ルマテ、此旨ヲ奉戴、心力ヲ尽シ、勉励可有之コレアルベク候事。

是迄コレマデ於幕府バクフニオイテ取結トリムスビ候条約之内、弊害有之コレアル件件ケンケン、利害得失、公議之上、御改革可被為在アラセラルベク候。猶外国交際之儀、宇内之公法ヲモツテ、取扱可有之コレアルベクアヒダ、此段アヒ心得可申マヲスベク候事。


〔史実〕
これは、明治元年(慶応四年)正月十五日、開国の御沙汰を国内に布告せしめたまうたものである。世態が一変したので、朝議の上、外国と和親条約を結ばせられることになつたから、上下一致、疑惑を起さないやうにして、大いに兵備の充実を図り、国威を諸外国に輝かすやうに、列藩士民に至るまで勉励しなければならぬとある。新政に伴ふ外交の方針を訓示せしめたまうたものと拝せられる。「宇内之公法」とあるは、今日の「国際公法」であらう。


三浦藤作 謹解『歴代詔勅全集 第5巻』(河出書房、昭和15年)

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